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原敬は100年前の今頃、富山にいた   

 パソコンの中の伏木関係資料を整理していたら、偶然、100年前に富山を訪れた際の原敬(当時、政友会総裁)の日記と紀行文の写しが出てきたので、掲載しておきます。富山県東部各地の漁村に“米騒動”がおきる数ヶ月前である。
 なぜ、こんなものが手元にあるのか記憶がさだかではないが、文中にある「日方風」が、その原因?であろう。富山独特?の風「ヒカタイ」のことを調べていたとき、富山県を訪れていた原敬の紀行文のなかに「日方風」を見つけ、驚いて写したのであろうと思う。
 今、原典に当たりなおす余裕がないが、日付がだぶっているのは、前半が日記で後半が紀行文「北より南」ではなかろうかと思う。

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大正7年5月4日

 午後8時、上野を出発して富山に向かう。

   送りける春にも遇はん越の旅

5月5日 

 途中で、昨夜大風雨であったということを聞いた。
 午前9時50分富山着、富山ホテルに投宿した。
 富山県知事井上孝哉氏から午餐に招かれた。
 午後、呉羽山公園に往き、四方を眺めた。
 晩に官民会同の歓迎会に出席した。

5月5日

 越後海岸で夜が明けた、昨夜暴風雨であったいうことで、雨は晴れたが、空気がとても冷めたい。

   小袖着て過ぎぬ葉桜茂る駅

 午前9時50分、富山に着いた。井上知事から午餐に招かれた。午後、呉羽山の公園に上って越中の平野を眺望し、夕刻、旅宿の富山ホテルに帰った。

   暮遅き野や蕭然とくれは山



5月6日 

 午前、北信八州大会に出席し、演説をした。
 富山市長から午餐に招かれた。
 午後売薬製造会社(50万円)廣貫堂を一覧した。
 私は出席しなかったが、午後の公開演説会は盛況であったそうだ。晩に我が党の大懇親会を開らき私も出席した。

5月6日

 午前、北信八州大会に出席して演説をした。稻垣市長の午餐に招かれ、午後は有名な売薬製造所である廣貫堂に行って、製薬の有様などを見た。

   薬干す庭に親しむ羽抜鳥

 夕方、大懇親会に出席し、宿に帰ってから更らに井上知事の晩餐に招かれたりして深更まで過ごした。
 この日は、西の風で雨が晴れ、雪を戴く越中の霊峰立山などが見えた。方言で、西風を「日方風」という。

   青葉越しに立山晴るゝ日方風



5月7日 

 午前7時40分富山を出発し、高岡に行き前田2代の廟所である瑞龍寺及び繁久寺を見た。如何にも壮大な墓所であった。伏木港に赴き一覧した。

その後、公会堂での町民歓迎会に出席した。
 高岡に戻り陳列所を一覧し、有志者から午餐に招かれちょっとした演説をした。
 4時17分高岡発の列車で金澤に向った。
 午後5時過ぎ金澤に着、旅宿に行かないで官民合同の歓迎会に出席して演説をした。(出席者170~180名)
 土岐石川県知事から晩餐に招かれた。古今亭に投宿した。

5月7日

 午前7時40分、富山を出発して高岡に着いて、伏木行の汽車を待合せたが、時間があったので、鳥山市長の案内により、前田家2代の当主利長の菩提寺である瑞龍寺に参詣した。
 多くの伽藍は跡かたもなかったが、山門や本堂などは如何にも壮嚴にして、往時を偲ばせるものであった。また、繁久寺にある利長の墓所を見た。

これまで多くの大名の墓所を見たが、このような壮大なものは見たことがない。利長の伝説などを聞き、また墓石の様子などを見て、感慨無量であった。

   樹古りて墓石の寂びや苔の花

 高岡から伏木に行き、港内を一覧し、町の有志から招かれて公会堂で休憩して高岡に帰った。 
 高岡の物産陳列所などを見てから、官民有志の午餐に招かれて演説をした。
 午後4時17分、金澤に向った。
 この地方の農家の周囲には必らず樹木を植えている。これを「カイナ」と称し、家の宝として、容易の事では伐採しないと聞いた。

   傾ける軒にカイナの茂りかな

 金澤に着いたら、官民有志から直ぐに歓迎会に来てほしいといわれ、停車場から旅装のまゝ北間楼に行き、ここでも演説をした。土岐知事等から鍔甚での晩餐会に招かれなどして、10時過ぎ、旅宿の古今亭に入った。



5月8日 

 9時40分金沢を出発し、午後5時過ぎ京都に着いた。


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by kaguragawa | 2018-05-07 21:39 | Trackback | Comments(0)

ながらくのごぶさた   

 自由に使えるパソコンが手元にないため長らくのごぶさたである(当分今後も)。まだこの世に在籍していることだけを、報告しておきます。

 最近、小さなわくわく、大きなわくわく、がいくつか続いたのが、残念ながら記録しないままになってしまった。

 追記:
 今、わくわくしながら読んでいる本の紹介だけでもしておきましょう。「わくわく」といっても、池内さんの行き届いた筆致にわくわくしているのであって、その悲痛な時代に心が弾んでいるわけではありませんが。
 池内紀『闘う文豪とナチス・ドイツ—―トーマス・マンの亡命日記』(2017.8)
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by kaguragawa | 2018-05-05 19:16 | Trackback | Comments(0)