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南陽堂のこと:「尾張町界隈の老舗と名所の由来」から   

 「尾張町界隈の老舗と名所の由来」から《南陽堂》さんの項を、一部省略しながら、紹介したいと思います。


 南陽堂 尾張町一の八の七

 江戸時代後期より、富山市の総曲輪通りに店を開く古書店南陽堂がその前身となっている。もちろん現在も当地に、この店は老舗として現存している。
 昭和十四年、当時美人で評判だった柳川スミさんは、店で働いていた大番頭の昇爾さんと結婚、分家してこの金沢・尾張町に店を開いたのが始まりとなる。以来、一貫して古書を取り扱い、豊富な蔵書と店主の人柄を慕い、旧制四高から金沢大学に至る教授や学生の溜まり場となっていた。今でも金沢市内だけではなく、東京や大阪などからも地図片手にやってくる人もある。文化人といわれる人の中で、この店へ入ったことのないというのは皆無に等しい程である。とにかく本が好きな店主で、どんどん揃えるので、その蔵書量は膨大で、店内に入ると別世界を訪れたような気持になる。薄暗い本の山の中にいると、紙魚(しみ)という言葉が何となく実感されてくるのもうなづける。
 昭和五十三年には先代の跡を受けて誠が二代目を継ぎ、本を生涯の伴侶としている。店内の雰囲気は相変わらず異世界のようである。単に本を売るのではなく、古くより変わらない人の心の「ふれあい」を第一義としているので、売り上げよりもついついお客様との話がながくなってしまうのが欠点だとか。
 建物は一見平屋建てであり、中に入ると二階建てという江戸時代そのままの趣を残している。元三田商店の母屋だったので、参勤交代の行列を上から見下さないようにとの、下尾張町商人の奥ゆかしさを感じさせている。



 *『尾張町界隈の老舗と名所の由来――現代に生きる歴史の息吹』(尾張町商店街振興組合・尾張町若手会/1987.1)

by kaguragawa | 2014-06-22 22:41 | Trackback | Comments(0)

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