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《噛んで含むような話?》   

・その一

 「噛(か)んで含むような話しぶりに感銘をうけました。」という文章をみて、「あれれ・・・」と思った。
 これはどうみてもおかしいのだ。
 「噛んで含む」ではなく「噛んで含める」だろう。web上の辞書には、こう書かれている。1.の語釈に、語源も読み取れる――。

【噛んで含める(かんでふくめる)】
 1 親が、食物をかんで柔らかくして子供の口に含ませてやる。
 2 よく理解できるように丁寧に言い聞かせる。「―・めるような説明」


・その二

 ある人が、文中の「噛んでくくめる」という文章を見て、「あっこれは誤植だ。」と言った。

「噛んでくくめる」は、「噛んでふくめる」の間違いだろう、というわけだ。
 だが、さにあらず。「くくめる」に漢字をあてれば、【哺める】【銜める】【含める】だ。
耳慣れないことばだが「噛んでくくめる」という表現があるのだ。また「噛んで含める」は、「かんでふくめる」とも「かんでくくめる」とも読めるのだ。

 ・・・と物知り顔で書いているが、「噛んでくくめる」を誤植だと思った「ある人」とは、誰あろう「私」なのだ。一昨日の項に登場する徳田秋聲の小説『黴』を読んでいて、――もう10年ほど前のことだが――「噛んでくくめる」に出会って、こういう表現を初めて知ったのだ。

 以上、きのう『黴』を読み返していて思い出し、自分用に 「噛んで含む?」メモをした次第。

〔追記〕
 今、webのgoo辞書を見ていたら「噛んでくくめる」の用例に、〔「博士は噛んで―・めるように言うのだったが」〈秋声・縮図〉〕と、ある。『黴』だけでなく『縮図』にも、「噛んでくくめる」は登場するようだ。秋聲は、終生、「噛んでくくめる」を使ったようだ。

by kaguragawa | 2014-06-02 22:48 | Trackback | Comments(0)

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