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言いたい事と言わねばならない事   

 桐生悠々。彼も9月に亡くなった私の導師である。アメリカを相手にしたなんの見通しもない戦争に突き進む3か月前、彼の葬儀の場にまで官憲が踏み込んだエピソードは決して忘れてはならない歴史の一瞬だ。


 人動(やや)もすれば、私を以て、言いたいことを言うから、結局、幸福だとする。だが、私は、この場合、言いたい事と、言わねばならない事とを区別しなければと思う。
 私は言いたいことを言っているのではない。徒(いたずら)に言いたいことを言って、快を貪っているのではない。言わねばならぬことを、国民として、特に、この非常に際して、しかも国家の将来に対して、真正なる愛国社の一人として、同時に人類として言わねばならぬことを言っているのだ。
 言いたいことを、出放題に言っていれば、愉快に相違ない。だが、言わねばならぬことを言うのは、愉快ではなく、苦痛である。何故なら言いたいことを言うのは、権利の行使であるに反して、言わねばならぬ事を言うのは、義務の履行だからである。もっとも義務を履行したいという自意識は愉快であるに相違ないが、この愉快は消極的の愉快であって、普通の愉快さではない。


 『他山の石』発行満二周年によせて書かれた文章(『他山の石』昭和十一年六月五日)から

   *桐生悠々  1873.05.20~1941.09.10

by kaguragawa | 2013-09-12 23:08 | Trackback | Comments(0)

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