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『私製・再録 誤植読本』(1)――「押絵を旅する男」   

 高橋輝次編著『増補版 誤植読本』(ちくま文庫/2013.6)

 書店で見つけ迷ったが購入。案の定、予定していた雑事をほっぽりだして読みふけりました。そう言えば、以前誤植について書いたことがあったぞと思って、探したら8年前に書いたものと5年前に書いたものがありました。
 まず、8年前のものを再録しておきます。

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 ある粗忽な人がいて、「押絵と旅する男」を、そもそも「押絵旅する男」と読み間違えたのか、原稿を書くときに手がすべったのか、はたまた印刷屋の誤植なのか、結果としてU市の発行する小さな観光案内パンフレットの“しんきろう”の案内文に《押絵旅する男》(!?)の一節が紹介された。“と”が“を”に入れ替わり、「押絵を旅する男」が誕生したのだ。

 事態はそれに留まらなかった。次々と発行される類似のあるいは安直な?観光案内、名所案内に「江戸川乱歩『押絵旅する男』」が紹介されたのです。
 それをまた原文にあたらずに孫引き(曾孫引き?)して「某」大会社の広報誌に、「押絵を旅する男」を登場させた男がいたのである。
(以上は、ひそやかな話であって、私以外に何人知っているかは不明です。)

 そもそも「押絵」って何?、と思う人がいたなら「押絵を旅する」ことの不可思議性にも気づいたのではなかろうか。

 ところで「しんきろう」を売り物にしているU市、『江戸川乱歩全集 第五巻 押絵と旅する男』の註釈に、「魚津は富山県北東部沿岸にある水産工業都市」とあって、編集者には済まないのですが、このかっこいい「水産工業都市」には、笑ってしまいました。
 魚津(うおづ)は、現在、魚津市ですが、私の感覚では昔も今も「漁業の町」です。そしてこの小説が書かれた時点〔幻の初稿は、1927〕では、富山県下新川郡魚津町でした(1953.04.01周辺町村との合併により魚津市)。                      (2005.01.15)
 

by kaguragawa | 2013-06-29 18:25 | Trackback | Comments(0)

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