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《延原謙》のこと   

 いつか《延原謙》のことを書いた記憶があったのですが、このブログには見あたりません。旧日記を引っぱりだしたらありました。5年前に書いていました。
 《延原謙》、ご存じの方もあるかも知れませんが、シャーロック・ホームズものの探偵談の「初の」完訳者と言われている人です。
 近いうちに書こうと思っていることと関わりのある人なので、先に紹介?しておきます。
 以下、2008年の旧日記より転写。


●「ホームズ全集」 2008/01/09

 今年は、今一番新しい“ホームズ全集”、日暮雅通訳の「シャーロックホームズ全集」(光文社文庫)を読もうと思っています。これは、すでに去年の暮れ近くに決めたことなんですが、久しぶりに“ホームズ全集”のことを思ったのは、昨年末ある本で全集の既訳者(初の全集訳者)である延原謙(1892-1977)のことを知り、彼がその津山藩の古武道の家〔竹内家〕出自であることも知ったからなのです。そんなことやいろんなことがあって、ふたたび“ホームズ全集”に心が向いたというわけなのです。

 ホームズの翻訳史や、竹内家と武術のことなどもいずれ・・・。

〔追記〕
 軽井沢の追分にホームズの銅像があるそうです。追分の油屋旅館の離れで、延原がホームズ全集の訳業を成し遂げたホームズ所縁の土地だからです。


● 『延原謙探偵小説選』(論創社) 2008/01/09

 思いがけぬ展開になってきました。昨日、ちょっとした空き時間に延原謙のことをメモした時にはまったく知らなかったのですが、去年の年末に『延原謙探偵小説選』(論創社/2007.12.30)という驚くべき本が出版されていたのです。
 「驚くべき」というのは、一つには,翻訳家としての延原謙は知っていましたが、小説家としての延原謙については、不知、未知、想定外だったゆえ、そして、一つには、そうした知られざる作家が一冊の“本”に仕上げられているということが出版界としては大変冒険的に思われたこと、によっています。

 そして偶然、ちょっと大きめの書店にいく機会ができて、店員の方に聞いてみたらば在庫があって、きょう、今、ずっしりと重たい『延原謙探偵小説選』が――きのうには思いもしていなかったことですが――私の目の前に、あるのです。
 創作ものを読む心の余裕は今ないのですが、うれしいことに、「創作篇」のほかに「評論・随筆篇」があり、その幾篇かに興奮しながら目を通しているところです。

 “私は岡山県の津山という城下町で育ち、中学三年のとき東京に出てきた。まず住んだところは牛込の早稲田南町で、ここは夏目漱石邸のすじ向うともいうべきところだった。まもなく喜久井町へ移り、そこから早稲田中学に通った。英会話の高杉滝蔵さん、英語の吉江孤雁さんなどもそうであった。
 当時は市電の最も近いところは神楽坂下であった。中学五年のころ江戸川まできた。若松町ができたのはその後だ。芝の琴平町に知り合いがあって、よく遊びにいったが、往復とも徒歩だった。歩くことは大して苦にならず、神田の古本屋街にはよく素見にいった。
 津山の家は士族屋敷で倉のなかにいろんな本があった。中には文芸倶楽部などもあった。むつかしい本は分らないから、この文芸倶楽部を引張りだしてよく読んだ。・・・”(回顧五十年)

 “私の家では昔から万朝報を購読していた。多分私の亡父が涙香の友人であったような関係ではなかったかと思っているが、従って母、大伯母、祖母の三人は万朝報初号からの読者で、大の涙香好きであった。(中略)私が新聞の続きものを読みだしたのは多分『鉄仮面』の中途からだったと思うが、家では涙香ものはみんな切りぬいて巻物にしてあったから、その後の幽霊塔、野の花、巌窟王、絵姿、噫無情、鉄仮面、白髪鬼、雪姫、花あやめなどを読むことが出来た。”(涙香の手訳本)

〔追記:2013.02.13〕
 上に「私の亡父」と書かれている延原謙の父こそ、私が今、興味をもっている《馬場種太郎》なのです。馬場種太郎のことは、いずれ。

by kaguragawa | 2013-03-09 22:43 | Trackback | Comments(0)

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