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もういくつねるとお正月   

 偶然、8年前?に書いたものが見つかったので掲載しておきます。


♪もういくつ寝るとお正月、お正月には・・・♪

 瀧廉太郎の曲「お正月」は、お正月の歌というより、指折り数えてお正月を待つ歌です。 が、この「もう●つ寝るとお正月」というフレーズは、この曲の作詞者・東くめのオリジナルの表現でなく、当時よく使われていた言い回しかも知れない、ということに気づきました。

 きょう偶然この「もう●つ寝ると」という言い回しを、あるところで見つけたのです。
 巌谷小波(いわや・さざなみ)の童話「こがね丸」が発表された『少年文学叢書』(博文館/1891〔明24〕.1)の[凡例]中です。この凡例の末尾で小波は「庚寅の朧月。もう八ツ寝るとお正月といふ日 昔桜亭において 漣山人誌」と記してるのです。(岩波文庫『日本児童文学名作集(上)』)

 しかしこの小波の特徴的な言い回しと、「お正月」の歌いだしの部分とは、偶然の相似なのでしょうか?。

 そうとも言えない事実があります。
 巌谷小波と瀧廉太郎、東基吉・くめ夫妻は交流があったのです。
 「お正月」を含む『幼稚園唱歌』(共益商社/1901〔明34〕.07)の緒言には“作歌を、女子高等師範学校の附属幼稚園において批評掛りを担当せられるゝ東基吉氏、及び漣山人巌谷氏に、作曲を瀧廉太郎氏、鈴木毅一氏及び東クメ氏に乞ひ、歌曲の品題、歌詞の程度、曲節の趣味、音域等、凡て以上の諸先生が多年の経験を基にして製作せられたるものを集め、ここに新に此の書を編したり、(以下略)”とあります。

 となると、やはり♪ もういくつ寝るとお正月 ♪の出処は、巌谷小波かと思うのですが、どうでしょう?。

 なお、小波はライプツィッヒに留学した廉太郎とベルリンで再会しています。
 小波は、ベルリン大学東洋語学校に日本語の講師として先立って赴任していたのです。

〔追記〕
岩波文庫『日本児童文学名作集』は、なかなかユニークな選集です。一度手にとってみられることをお勧めします。

by kaguragawa | 2012-12-29 06:21 | Trackback | Comments(0)

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