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第二寒波   

 北陸は、福井、金沢と新潟はまた大雪である。間にはさまれた富山県では、呉東(県東部)は平野で20センチほど、が呉西(県西部)の平野部はまったく雪が無い状態である。

 先日から、「御満座荒れ」、「針歳暮荒れ」という地縁語ともいえるユニークな気象語を紹介してきたが、「クリスマス寒波」ということばもあって、これがあてはまる天候となったわけだ。偶然の範囲なのか、「特異日」といえる数値的特徴のあるものなのかもわからぬが、この「クリスマス寒波」という語が――「寒波」が“cold wave”の直訳だろうとは思いますが――、和製語なのか輸入語なのかもわからぬ。宗教的な語を背負っているが、同様な「御満座荒れ」(「報恩講」――親鸞の命日――にちなむ)とはちがい、民俗的なにおいはついてない(と私には思える)。

 某喫茶店も休みだったが、学研の『夢二美術館』を閲覧しようと図書館に寄るも、ここも休館日。


 帰宅後、夕方のニュースで耳にしたことばに「じんだはん」ということばがあった。何十年振りかに聞いた〔富山弁〕である。この言葉が富山県警本部長の口から出たのだ。県民に「じんだはん」(=《巡査はん》)として長年親しまれてきた警察官の信頼が失われたことへの悔恨から出たことばである。「悪いことしたら、〔じんだはん〕に連れていかれる」と戒めの言葉として、子供のころよく聞かされたものである。が、悪ガキの私ら(「おらっちゃ」という)は、「じんだらはん」と呼んだ。子供とは言え、「警察官」という権力の微妙な関係性を、親しみの語だけでは受けとめられなかった故に、富山弁の蔑称「だら」を、あいだに挟み込んだわけだ。一方で、交番に夫婦者で住んでいる警察官がいて、10円玉を拾ったといって届けて「鉛筆」をもらった。
 知人夫婦を殺害し証拠隠滅のため放火したという容疑者警部補は、「じんだはん」の語を知る私と同世代である。二人の生命と引き換えに守らなければならぬものは何だったのか。
 雪の降りしきる中、容疑者警察官の自宅の家宅捜索がおこなわれている映像は寒々しい。被害者夫婦と親交があったとして初期の捜査段階で参考人としてこの警察官から事情を聞きながらも、アリバイを確認していなかったというのも寒くなる話だ。

 クリスマス・イヴは、第二寒波の宵となった。

by kaguragawa | 2012-12-24 17:41 | Trackback | Comments(0)

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