金沢と豊巻剛(3)   

 江南文三は、古い辞典類では石川県生まれだったり、金沢生まれだったりの記述がみられますが、これは間違いのようですね。戸籍上は明治20年12月26日、東京市本郷区曙町一番地出生となっているようです。開成中学校を卒業して、第四高等学校に進んだようです。辞典類には異同があって私には確としたことをここに書けないのですが、四高の入学は、豊巻剛と同年の明治38年と考えてよいのではないでしょうか。
 四高の同期として知り合った豊巻が盛岡の出身と聞いて、江南から豊巻に尋ねたのはないでしょうか。

 江南:豊巻君、君は盛岡中学校の卒業ということだが、石川一(はじめ)君を知らないか?。
 豊巻:えっ、江南君は、どうして石川さんをご存じなんですか?
 江南:石川君は僕と同じように『明星』の同人なんだよ。
     彼の作品が、「白蘋」の名で明星に載ったのが3年前、明治35年の秋、
     僕はそれに刺激を受けて2年前から明星に投稿を始めたんだよ。

 上の対話は私の戯作で、実際のところ江波文三が啄木の作品に刺激を受けたかどうかはわかりませんが、ともに明星に作品を寄せる早熟の文才を持っており、お互いの存在は知っていたのでしょう。

 ここに盛岡:石川啄木(明治19年生)、金沢:江南文三(20年生)、豊巻剛(20年生)のトライアングルができあがったようです。

  『石川近代文学事典』(浦西和彦編/和泉書院/2010.3)には、【江南文三】の項があり、“38年に金沢の第四高等学校に入学。41年10月、北辰詩社の機関紙として創刊された「響」に寄稿し、第二号に「赤き唇」を発表。四高在学中に、「北辰会雑誌」や「スバル」に詩を発表した。42年9月、東京大学英文科に入学。翌年1月から大正2年12年まで「スバル」の編集を担当した。”とあります。

 金沢での豊巻と江南の間にどれほどの親交があったものかまったくわからないのですが、『響』はともかく、四高の『北辰会雑誌』には、豊巻も寄稿しているのではないかということです。これは、調べてみたいと思います。この辺りから金沢における豊巻剛の足跡を追う手がかりが得られるのではないかと思うのです。

 その後、豊巻は留年せず四高を3年間で卒業し、明治41年東京帝国大学文科大学国文科に進学、4年在学した江南はその翌年、豊巻を追うように同学の英文科に進学。一方、北海道を経て明治41年5月、東京に出てきた啄木は、東京での文学的交流を広げながら、42年1月、途絶した『明星』をその主要メンバーとして新たな文芸雑誌『スバル』として再生させます(第2号は、啄木みずから編集)。この『スバル』に、江南は当初金沢から寄稿したようですし、東京へ出てからこの編集を受け継ぎ、43年1月からは発行名義人も啄木から引き継ぐこととなります。
 東京の地で、啄木、豊巻、江南の三人が顔を合わせたのかどうかわかりません。その機会が訪れる前に、豊巻が亡くなってしまった可能性があるからです〔明治43年4月歿。享年24〕。その翌年に豊巻の雅号「黒風」を刻した遺稿集『黒風遺稿』が出されたといいますから、江南も関わったのかも知れません。
 残念なことにこの『黒風遺稿』、国会図書館にも、岩手県下の図書館にも、石川県下の図書館にも架蔵されていないようです。どなたか情報をお持ちの方があれば、お寄せくださるとうれしく思います。

 啄木の友人が金沢の第四高等学校(四高)にいたという短い報告を書くつもりが、推測ばかりの内容皆無のものになってしまいました。が、この豊巻剛が3年間、金沢でどのような生活を送ったのか、その豊巻の金沢での足跡を終える資料が残されているのか、おそらくは自由を謳歌したであろうこの同郷の友の金沢での学生生活を啄木はどのように受けとったのか、など、確認してみたいことがらもいくつ出てきました。
 いずれにせよ、資料の発掘が必須です。今は、豊巻の名前「剛」の読みについての報告で、お終いにしたいと思っています。 
[PR]

by kaguragawa | 2012-12-01 18:24 | Trackback | Comments(1)

トラックバックURL : https://kaguragawa.exblog.jp/tb/19295894
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
※このブログはトラックバック承認制を適用しています。 ブログの持ち主が承認するまでトラックバックは表示されません。
Commented by まゆみ at 2012-12-01 18:56 x
初めまして、人気サイトランキングです。
サイトランキングを始めました。
ランキングに、登録して頂きたくメールさせて頂きました。
SEO対策にも力を入れています。
一緒に発展していけれるように頑張りたいと思いますので宜しくお願いします。
http://site-ranking.jp/

<< 金沢と豊巻剛(4) 金沢と豊巻剛(2) >>