詩「鉱毒」(3)   

さらにも問はまほしきは四方の国人
おほくの世間も傍観のみして
集る教の堂塔の間
経文、香華もうはの空なる鐘の声
形式のみなる礼拝祈祷に
われ等が哭声聴き流さむとや

近つ代の政策 人の道を蔑して
英はさいなむ南阿人
米は虐ぐ太平洋上の土民
虚喝を事とす宗教家
虚栄を夢む哲学者
万国東大陸に罪悪を重ぬるも
これを掩へる詩人の虚句と画家の愚筆

人種の別ち無き世来らむと
そは類まれなるプラトンのたゞ美はしき夢なる歟
黄白相互に相凌ぐ今
優者の凱歌は劣者の悲調
大いなる悲劇演ずる東陸西陸を
まのあたりにも見聞くが如く
良民日毎離れ離れ、ああ散り散りに
行くを、走るを、倒るゝを見捨てたりな

世紀新まるも今日は明日の
昨日に過ぎず、限りなき空間
うつりゆく時間よ汝
いつの日にかは光明の
偉霊の壮美と個人の幸福もたらし来る
繰り返しまた繰り返す歴史の頁の
待ちあぐむまで数あるかな

迫害と、絶望と、落胆と
あゝ同情者なきわが儕輩
哭せざらむや、狂せざらむや
誠心籠めし老の一図に
さぶき牢獄につながるゝ身を
思へば他まで咀ふも浅間し或時は

われも窶れし身の影を
ゆくや流るゝ河水に写せばうつる物思ひ
さしも昔は清ふして里娘等が白布晒せし
流は絶えて魚も住まず
岸辺離離たる断草に破れて残る漁舟の骨
枯木を鳴して過ぐる風は白し

これも浮世の塵塚に
捨てし真鍬の柄は朽ち砕けて
祝儀、葬礼、婚礼、さては豊作秋祭りも
調度も是よりわきいでし
小作男が負ひけむ籠の半土の化りしに隣る

天も哀む愁雲の陣々もして
千里の悲風北山の霰吹き捲く声の波
鉱烟の波落し来て
こゝに道無し、光なくなく曇りし眼閉じて歩めば
ゆくへも知らず現世の理想も消ゆとこそ思へ

いまはとてすてゝ行くなり、顧みがちに
住み慣れし懐かしのふる里を、憫れなる小さき身
偉霊よ、汝の意志の顕現の
おぼろかならぬ証しには
とくも正しき人々の
声伝えてよ人々の、胸裡へ耳底へ

親同胞に離れ友に別れし独身の
あゆみ悩みて眺めいるや田圃の風物
情なき身やわが心 木にもあらず
涙なき世かひと心 石にもあらじ
大声挙ぐれば億万里外の天もこそ聞け
憂身を赤土に投げて燃ゆる真心
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by kaguragawa | 2012-10-12 22:36 | Trackback | Comments(0)

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