稲垣示『狭衣集』から   

 稲垣示『狭衣集』からこの時期に詠まれた歌をご紹介します。
 いまから124年前(1888〔明21〕年)、稲垣示が大阪事件の獄中のつれづれに詠んだものです。少し説明が必要ですがそれは追って。

   八月十九日酷暑なれども夜殊更(ことさら)凉しかりければ
むしのぼる昼の暑さのしのぎ風立ち来る今宵月の凉しき
独り寝の心やすけに蚊帳つればさわらぬ月は伽にぞ入り来る

   同二十一日夕暮れに焼き鰻の香を嗅ぎて
吹上の浜風涼みがてらにも焼けるうなぎのにおいゆかしき
ふる里の門田やいかにみのるらん柿の衣にしむ秋のかぜ

   同二十二日の夜月の昇るを待ちかねて
腰のして待つもちづきは出も来ず兎の杵はそこねけるかも
紅のあつき日脚に引きかえて裳裾(もすそ)涼しくのぼる月かげ

   岩代国磐代山の変事を聞きて
まがつ世のためしとどろに鳴り出る神の御陵の磐代の山

  *8月22日は、旧暦の七月十五日満月(望月)にあたる
[PR]

by kaguragawa | 2012-08-23 06:43 | Trackback | Comments(0)

トラックバックURL : https://kaguragawa.exblog.jp/tb/18695102
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
※このブログはトラックバック承認制を適用しています。 ブログの持ち主が承認するまでトラックバックは表示されません。

<< 福田恆存の生誕100年 炎天下に「重松君之碑」を訪れる >>