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“谷口貴都先生を送る会”   

 へやを出ると強いユリの匂いがかおってくる。“谷口貴都先生を送る会”でいただいてきた純白のユリである。

 ブログ「苗加+野村島=ひがしのじり」で今日、先生の送る会のあることを知り、参加させていただいた。いただいてきたユリのようにやさしくも峻烈な奥様のあいさつにはことばを失った。
e0178600_19524451.jpg  谷口先生が奉職されていた高岡法科大学についても近くにありながら、しかも気になりながら知らないことの多いことに自分の不明をはじる思いでした。先生はこの大学開設時からここにあって自らの職を、仕事を守ってこられたのだ。

 先日も書いたように先生とは何の所縁もなければ、お話したこともない、そんな私が“送る会”の場に足をはこぶことにためらいがなかったわけではない。が、もし病に倒れておられなければ、今頃はきっとお会いしていたはずとの思いで、こころの中で「先生有り難うございました」と、 黙祷のひとときに頭をさげご冥福を お祈りさせていただいた。先生とのつながりは、先生が一つの課題とされた富山の生んだ明治期の法律家・磯部四郎だけなのです。

 ここまで“先生”と書いてきて、実は違和感がないわけではありません。それは、谷口先生が私のいわゆる学校での「先生」ではないということに因るのではなく、なによりも私とほとんど年齢の違わない、しかもおそらく学生の時代は私と同じ気持ちで法律を学んでおられたのではないかという親しみからなのです。先生が自らの専攻として選ばれた古代のローマ法やそうした観点からのフランス、ドイツ、日本の民法の成立を歴史的に跡付ける作業は、ある理由から私にも親しいものだったのです。
 今も時折思い出し、生きる糧にもしている“法律家は論理をもって闘うのです”という言葉は、私が短い期間ながら教えを受けた――そして谷口先生も親しくされていたであろう――古代ローマ私法の研究者・吉野悟先生によって、骨身に叩きこまれたものだったのです。

 送る会の終了後、主催者の厚意によって先生の研究室が開放されていてそこを訪問させていたいた。
e0178600_19525969.jpg そこには私が大学時代から卒業直後に親しんだ多くの書が、「講座現代法」をはじめ「川島武宜著作集」や「戒能通孝著作集」だけでなく、世良晃志郎訳のマックス・ウェーバーの社会学や「内田義彦著作集」や先生のちょうど一週間前に亡くなられた歴史家の遠山茂樹氏の著作集もあった。おそらくほぼ同年齢であることから推察するに、先生も私と同じ頃に これらの本を熱い思いで、読まれたのではなかろうか。そしてそこには、吉野悟氏の『ローマ所有権法史論』や『ローマ法とその社会』も。
※写真は、送る会のしおりからお借りしました。


 今は主のいなくなった研究室の本はどこへ行くのだろう。法の歴史を学びたいと思う若い人たちに読み継がれることができたら先生もうれしいことだろう。

 微力ながら谷口先生の磯部四郎研究の跡追いをして、先生にご報告したいと思っています。

by kaguragawa | 2011-10-09 19:34 | Trackback | Comments(6)

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Commented by mura at 2011-10-15 21:01 x
はじめまして。お別れの会にご出席なされ故谷口先生も喜ばれていると思います。私は当大学の一期生で先生を身近に拝見させて頂いておりました。先生は当大学発展とローマ法研究に一筋に頑張っておられました。平成12年に博士号を取得された「ローマ所有権譲渡法の研究」も長年の研究の成果であると思います。機会がありましたらぜひお読みくださいませ。その私も先生とご一緒させて頂いた外書講読会の続きを微力でありますが解いていきたいと考えております。
Commented by かぐら川 at 2011-10-16 19:56 x

muraさん、コメント有り難うございます。谷口先生が法科大学の創立から関わっておられたとは知りませんでした。基礎法学の基本文献すらない無かったであろう設立時での大学での研究は大変だったろうと思います。お別れの会に参列させていただく前に『ローマ所有権譲渡法の研究』の本の姿だけでも拝見しようと思ったのですが、県内の公立図書館にはどこにも架蔵されていませんでした。なんとか目にしたいものと思っています。muraさんは、研究の道を進んでおられるのでしょうか。もしさしつかえなければ、非公開コメントも書き込めますので、いろいろ教えてくだされば、幸いです。
Commented at 2011-10-20 22:33 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by kaguragawa at 2011-10-22 14:53
muraさん、有り難うございます。法科大学には磯部四郎に関係する資料があると言うこともお聞きしました。私のような年配者には大学の敷居は高いのですが、いちど出掛けてみたいと思います。
Commented by mura at 2011-10-26 05:02 x
『磯部四郎研究』 平井一雄・村上一博 信山社で定価10000円で販売されております。この中では谷口先生も出筆されております。大学にあると思われますので一度ご覧になられても良いかもしれませんね。
Commented by kaguragawa at 2011-10-26 19:49
muraさん、有り難うございます。ご紹介いただいた『磯部四郎研究――日本近代法学の巨擘』、実は昨年のちょうど今頃、“磯部四郎”を検索してこの本を知ったことが、磯部四郎にいっそうの関心を持つことにつながりました。そしてこの本の紹介をこのブログに書いたことが、読売新聞の記者の方の目にとまり、磯部四郎のことを簡単ではありますが、紙上でとりあげてもらうことになりました。その記事には、谷口先生のお名前も載っています。
この項目の最後に、「磯部四郎」のタグをつけましたので、昨年12月の「大逆事件弁護人・磯部四郎のこと」、お時間のあるときに見ていただければ幸いです。

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