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06/11/2005〔『俳人はぎ女』〕   

・『俳人はぎ女』(福田俳句同好会(盛田成信)編/桂書房/2005.5)

1907〔明40〕からほぼ5年間に、高濱虚子・松根東洋城選の「国民俳句」(国民新聞の俳句欄)を中心に600句もの句作品が掲載されたにもかかわず忽然と消え、やがて夫の代作説までも出てその評価が逆に俳壇からの抹殺に近い状態になってしまっていた富山の女性俳人澤田はぎ女の、地元有志による復権の書。
・・・と言えば、かなりものものしいのですが、「一章 はぎ女句抄」にとられている五十句の新鮮な世界にふれるだけでも心が軽くなりました。
 
 吾夫を外へはやらじ月こよひ
 此君の妻で嬉しや桃の花
 乳張ってくるわりなさや更衣

 
 元旦や田に降る雪もはつはつし
 尾を振って鮒の機嫌や温む水
 叩いては買わぬ客のみ西瓜かな
 魚屋とあらがう家や暮れの秋
 地の底に釣瓶の音や冬ごもり

また本書には虚子、東洋城、句佛からの書簡も収められており〔三章 はぎ女への書簡〕、なかでも松根東洋城との書簡の交感の様子から当時北陸の一隅での家庭をもつ女性の句作、投稿がいかに地域から白眼視されたか、そのはぎ女の苦悶に東洋城がともに悩みながらの懇切な指導振りが伝わってきます。

“御子様寝つきの後句作遊ばし、二時三時にも御成りの事御勉強驚き入り候。聞くとも嬉しききわみには候得共、からだの為の又何よりは家の為の、いかゞと思ふに果して母君の御不興とや、私よりは今更勉強して下されと申す元気は無御座候。さるとて句を止めてたゞの家政のみにては尚更そんな残酷なことは云う勇気も無之候。母君の御叱りも無理ならず、君のなされ方も嬉しく。充分御察しはすれどどちらともさつぱり云へぬ私の心も御察し下され度候。”

 はぎといふ女に生れ星祭

この句を、萩の絵とともに裏表紙に装丁された本のつくりも美しいものです。

“地方においてのこういう本物に接すると、東京にいて中央、地方などという問題は軽くふっ飛んでしまう。”(沢木欣一『俳の風景から』中のはぎ女評)は、このような本の出版にもあてはまるのではないかと思えてきます。

*澤田はぎ女(はつい) 1890(M23).06.14~1982(S57).12.25

by kaguragawa | 2005-06-11 06:50 | Trackback | Comments(0)

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