三島霜川「ひとつ岩」――いわき市四倉の人々へ
2011年 04月 08日
そんなことを考えていた折に、昨晩、震度6強の大きな地震のニュースがまた飛び込んできました。東北の方々にはかける言葉がありません。
ところで112年前(1899〔明治32〕年)の4月8日付けの『世界之日本』――当時の総合雑誌です――に、その第一回分が掲載された小説があります。このブログでおなじみの三島霜川の実質的な処女作「ひとつ岩」です。(「実質的」というのは、第二作であるにもかかわらず先に公表され処女作扱いされている作品「埋もれ井戸」があるからです。)
とつぜんこの小説を話題にしたのは〔4月8日〕という今日と同日であるというトピックスとしてではありません。それは偶然にすぎないのです。この小説の舞台が、福島県の漁村なのです。
福島第一原子力発電所から20キロ、30キロという同心円が描かれた地図を何度も見せられるたびに気にしながらつい先日までその惨状を確認するのがはばかられていた場所がありました。「福島県いわき市四倉」です。30キロ圏域から5キロほど南にはずれた場所にある沿岸域の「いわき市四倉町」は、津波の大きな惨害に見舞われています。
(下の古い鳥瞰図を見れば津波に襲われたときの被害の大きさがわかっていただけるかと思います。)
三島霜川は、富山県が生んだ明治期の作家として名前だけは県内で取り上げられることのある作家ですが、彼の文学上の「故郷」は彼の生まれた県西部の庄川流域の寒村だけではありません。彼が14、15歳の頃住んだ「福島県石城郡四ツ倉町」の漁村とそこに生きる人を彼は初期の作品でなんども作品の舞台としてとりあげているのです。
そして、今、霜川の「ひとつ岩」を、――短編ですがかなりの分量があります――このブログで読みやすいテキストにして、少しずつ掲載していこうと、考えているのです。
追記:絵図右下に、「ひとつ岩」のテーマになった岩礁が見えています。
ということで、今日は予告篇としておきます。
by kaguragawa | 2011-04-08 20:38 | Trackback | Comments(0)