三島霜川の命日
2011年 03月 07日
境の涯の木立は、はや夜の色に染められて、うっすりと煙っていた。見返る町の方は、家並みの軒ランプや電燈に、ひとところ、ぱっと映々しくなって、町の噪ぎはちっとの間底の方へ籠められてしまった。
「お星っ様の瞬きの具合じゃ、明日ぁまた風だろうぜ、……なっ。」
今日は、三島霜川の命日。といっても亡くなった家が郊外の中野のどこであったものか、臨終に立ち会った水守亀之助の手記はあるものの場所が記されていなくて今になっては特定できないのだ。
上記は初期の小説「はんけち」(「新小説」所載/明治34)の一節。
by kaguragawa | 2011-03-07 23:53 | Trackback | Comments(0)