秋の凉風の「ひがし茶屋街」   

 リュートの奏でるバッハの作品がかすかに聞こえてきて、たしかに知っている曲なのですがどの曲と特定できずに、でもあらためて聞きたいと思いその曲の覚えにノートにその特徴的なメロディを書き留めていると、すずしい風が店前の格子から吹き込んできました。リュートの音色とも、秋の凉風とも似合うその曲は、ゴールドベルク変奏曲の一節だったのですが、まさにこの9月の金沢の「ひがし茶屋街」の一角に吹き込んでくる風は、秋声の中編小説『挿話』にもそよいでいる風だったのです。

 『挿話』は、兄の病気見舞いに訪れた金沢での3週間ほどをその滞在先の茶屋街の知人姉妹の店での人間模様とともに描いた作品です。秋声は、東京に大震災の起こるまさに大正12年9月に姪の結婚をまとめるために金沢に来ていて、ちょうど1年後の9月にも一時危篤にもなった兄・順太郎を気遣って金沢に来て、滞在先として遠縁の女性清川イトの茶屋の離れで過ごすのです。
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 以前から秋声がこのとき滞在した店が茶屋街のどのお店なのか知りたいと思っていたのですが、立ち寄った「茶房一笑」で「挿話」を拾い読みするうちに今日こそはと思い立って、路地をぬけて間近の「徳田秋声記念館」でその店の場所を聞きいてきました。それはなんと茶屋街の広い通りに面した直前までくつろいでいた「一笑」の2軒隣の――現在は民家の――家だったのです。

 この茶屋街については、かつてこの地を斜断して流れていた卯辰山からの小流れ「矢の根川」の現在の流路も知りたかったのですが、その手掛かりをつかむことができました。なんとあの銘菓で知られる森八の出店「文政の菓子司〔東山1-13-9〕」前の細い小路の下を斜めに横切るその流れを舗装ブロックの色を変えて示してあるのです!。
(続く)  

〔追記〕
「矢の根川」について書いた過去の日記から;

■2007/10/02 (火) 卯辰山の“矢の根川”

 暗渠化されてしまった――かつては生活の中にとけ込み、生活の中に生きていたと思われる――川を見つけると気になって、その流路を追ってみたくなります。
 暗渠化にともなって流路が変えられていることもあり、古い地図を探しだして現在の地図と比定したり、現地を歩きまわって旧水路の名残をさがしたり、暗渠の入口や出口を確認したりと怪しげな散策をすることにもなります。
 今、金沢の卯辰山の谷筋に源をもち、東の廓(ひがし茶屋街)を横切るように流れ、浅野川に流れ込んでいた「矢の根川」のことが、その名の由来とともに気になっています。
 *「矢の根」とは、矢の先につける「やじり(矢尻/鏃)」のこと。
 http://www.aoi-art.com/yanone/etc02-j.html
 http://www9.plala.or.jp/vintage/knife.html

■2009/05/03 (日) ちょっと金沢

 連休とあってか、ひがしの茶屋街にはさらに多くの人が。宇多須神社の祭礼。東山菅原神社に参拝。街角の掲示板に江戸時代の茶屋街の絵図の写しがあり、気になっている「矢の根川」が、茶屋街を斜めに横切り表門のところには橋がかかっているのが描かれている。矢の根川に八幡川という別名。かつての卯辰八幡宮にちなむのだろう。
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by kaguragawa | 2009-09-19 23:50 | 街歩き/たてもの | Trackback | Comments(2)

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Commented by 魚常 at 2009-09-21 15:41 x
コメントありがとうございました。
矢の根川
勉強になりました。
もっと近所の事勉強足りないなと実感しています
好きな地域だと一生懸命なんですが、地元は近くて遠い町になってます
ありがとうございました
Commented by kaguragawa at 2009-09-21 19:47
魚常さん、訪問くださって有り難うございます。19日は金沢も静かでしたが今日は観光客が多いようですね。浅野川は大好きな川です。やっと清流がもどってきたようで、ほっとしています。「並木町魚常の日記」、折々訪問させてください。

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