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霜川:いぬを描く   

 三島霜川の初期の作品(実質上の処女作)「ひとつ岩」から、主人公の孤老・治郎兵衛の愛犬・白(しろ)の姿態をいくつか紹介します。

 勢いよく、がらり雨戸を引き啓(あ)けると、白犬が一匹勢いきって外面(おもて)へ飛び出す。主人(あるじ)の姿を見て白犬は悦しさうに尾を掉(ふ)って、跳ね回って、低い声で二度三度甘えるように吠え立てた。
 老爺(おやぢ)はしゃがんで、「白か、うむ、うむ、可(え)いだ、可いだてば。」
 と、向脛へ飛蒐(かか)る白の頭を撫でて与(や)った。白と名づけられた白犬は、名の如く毛色(けなみ)の白い、光沢(つや)のある、肥(ふと)った、頭抜(づぬ)けて体格(がら)の大きな犬であった、
 白は少しく首を傾けて、不平らしく、また怨めしさうに、怩(じつ)と老爺の面(かほ)を向上(みあ)げる。
 老爺は面白さうに笑って……、突然憶い出したやうに、「ほい、失敗(しま)った。汝(われ)の土産(みやげ)買って来るのを忘れてただ。」


 音にびっくりして、白はむっくり飛起きて、伸(のび)をして、一度、不審らしく主人を瞶(みつめ)たまま、これも前足で耳の辺を掻き掻き旧(もと)の如くに突俯(つっぷし)て了(しま)ふ。


 白は老爺の膝の下(もと)で、微(かすか)な寝息を立てて眠っている。老爺は莞爾(にっこり)して、
「畜生、ははははッ、鼼(いびき)をしているだよ、仙太、こねえな畜生がよ。」と、心(こころ)から愛(いと)しさうに白の頭を撫でて与(や)って、仙太の方を振り向いた。

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by kaguragawa | 2014-04-27 07:56 | Trackback | Comments(0)

岩倉政治『どぅもども』   

 岩倉政治さんのエッセイ集『どぅもども』(1992.7)を読む機会があった。副題が「ジ-パンをはいた90才」とあるように、1903年生まれの政治さんの’80~90年代に書かれたもの。

 どのエッセイも明快かつ痛快しかも厳粛。久しぶりに堅固な精神に出会い、背筋の伸びる思い。

  *岩倉政治(いわくら・まさじ) 1903.03.04~2000.05.06
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by kaguragawa | 2014-04-20 19:00 | Trackback | Comments(0)

富山文学の会例会   

2014.04.19

 富山文学の会例会
 ――霜川文学の原点「ひとつ岩」を読む
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by kaguragawa | 2014-04-19 12:40 | Trackback | Comments(0)

愚考   

 土日の休みに一仕事しようと目論んでいたところが、先週も今週も近親の葬儀に重さなった。

 が、寸時を惜しんだ?愚考の片隅から見えてきたこともいくつかある。一つは明治前期の自由民権運動の実態を、――そこへの三井、三菱の絡みかたもふくめ――自分で確かめるしかないな、という切実な思い。

 同じようなことが、日清戦争と日露戦争の間の10年間にも言える。田中正造、河野広中、星亨、稲垣示という私にとってはそれぞれ異なった関心から近づきになった四人の「政治家」のこの十年間の足跡を比べながら追ってみることが、――これには先行研究の多くの蓄積がある――、自分で明治の時代を見るための目を確かなものにしてくれるのではないか・・・.
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by kaguragawa | 2014-04-14 01:05 | Trackback | Comments(0)

けやきの芽吹き   

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by kaguragawa | 2014-04-11 21:48 | Trackback | Comments(0)

今は   

 しばらくブログの投稿が無いが、どうしたのだ?、と。

 正直なところ、公私ともに――何が公がで何が私かわからぬが――多少疲労困憊気味であることが一因ではあります。
 ゆっくり休養できる見込みもないので、あたふた・あくせくしながら充電につとめたいと思っています。

〔追記〕
 先月末で営業を終えた富山駅前の銭湯「観音湯」。なんとかして、閉湯までに足を運んでこの湯につかりたいと思っていたのですが、思いは果たせませんでした。そんな“がっかり”も心身の意気消沈につながっているようです。
 いくらエイプリルフールの日とはいえ、真理への気迫だけが入場資格の場に「捏造」の語が乱入すると言う事態はバカげているし、ドッポウなどというリケン(理研×利権)までからんで、倫理も真理もその腐食は髄にまで達しているのではないか・・・。
 サクラの開花には心が動かないが野に匍うように小さな花をつけている草々には無限のメッセージを感じる。立ちどまって大地にふれたい。
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by kaguragawa | 2014-04-02 20:27 | Trackback | Comments(0)