「雪おろし」と「鰤起こし」(1)   

 昨晩から今朝の明け方にかけて、ものすごい雷鳴が何度もとどろきました。と同時に、バラバラーッと大粒の雨や霰(あられ)の屋根に叩きつけられる音も聞こえてきました。当地(富山)でいう“鰤起こし”です。
 この季節ならではのもので、この冷たい風雨、雷とともに、北陸には本格的な冬がやってきます。この雷は、冬の序幕に天地に鳴り渡る大音響なのです。この雷鳴に勢いづけられてなのか、驚いてなのか、はわかりませんが、寒ブリが富山湾に一斉に?回遊してきて、氷見漁港を中心にブリの水揚げが始まるのです。

 ところで、三島霜川に「雪おろし」という作品があります。初期の作品であり、読む機会もなく、冬の屋根からの「雪下ろし」がテーマになっている作品であろうと、思いこんでいました。

 が、そうではなかったのです。私の予想を裏切ったのは、そのタイトルの意味だけではなく、この作品そのものの意味でした。(が、作品そのものの意味については、作品論などというものを書く能力のない私が余計なことは書かないこととして、――1.作品を読みもせずに、新聞連載の書きなぐりの愚作だろうと決めつけていたという私のお粗末さと、2.この作品の改作・改稿作に「うたかた」「向日葵(ひぐるま)」「悪血」などの注目作があることだけ記しておいて――、)ここでは、「雪おろし」という作品名になっている言葉の意味に限定して、ちょっとメモをしておきます。

 南国の方には実感しがたいことでしょうが、豪雪地帯(雪国)では屋根に数メートルの雪が積もります。その重さたるやすごいものです。そこで屋根の除雪=「雪下ろし」をするのです。しかし霜川の小説のタイトルになった「雪おろし」は、この「雪下ろし」ではありません。別の意味の「雪おろし」なのです。

 Wikipedeiaによれば〔気象現象としての雪おろし〕として、次のように説明されています。
“日本海側では晩秋から冬にかけて寒冷前線が通過すると、雷が発生しやすい。その中でも上空に強い寒気が流れ込んだ日に鳴る激しい雷のことを島根県、新潟県、山形県等では雪おろし(雪颪)と呼び、真冬の到来を告げるものとする。鳥取県等、地域によっては雪おこしなどとも呼ばれる。”

  Wikiの説明で留意すべき点が2つあります。Wiki氏は、「雪おろし」に(雪颪)の漢字をあてているものの、その〔颪〕の字義(山から吹き下ろす風)――六甲おろしや赤城おろし、伊吹おろし、比叡おろしなどの「おろし(颪)」――には触れずに、端的には〔雪おろし=冬の「雷」〕と定義していることです。
 もう1点は、この言葉が使われる例示に「島根県、新潟県、山形県等」とあって「富山県」が挙がってないことです。実際、私の富山県では、初冬の雷の意味で「雪おろし」ということばは、私の知る限りでは使われていません。ここに説明されている「雪おろし」は、“地域によっては雪おこしなどとも呼ばれる。”とある「雪起こし」のことであって、それは冒頭に書いたこの地ならではの「鰤起こし」のことなのです。富山では〔初冬の雷=「鰤起こし」「雪起こし」〕であって、〔初冬の雷=「雪おろし」〕ではないのです。


 そこで霜川の小説「雪おろし」ですが、このタイトルになっている「雪おろし」が、除雪としての「雪下ろし」ではなく初冬の気象現象としての「雪おろし」であることに間違いはないのですが、それは《雷鳴》をその表徴とする豪快な「雪おろし」でもなく、鉛色の空からの雪しぐれをともなう山からの《風》を表徴とする「雪おろし」なのです。

(続く)

〔追記:2012.11.15〕
 ちょっと追記を書き出したら長くなったので、【「雪おろし」と「鰤起こし」(1-2)】として、下に移しました。
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by kaguragawa | 2012-11-14 22:51 | Trackback | Comments(0)

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