霜川の《7月30日》
2012年 07月 30日
今日は、その7月30日。霜川の誕生日についてちょっと落書きをしてみたいと思います。今まで、上記の7月30日と4月8日の二つの日について、論争があったとも聞かないのですが、便宜上、《7月30日説》《4月8日説》という表記で論を進めます。
まず、《7月30日説》。
現在実物は見ることができませんが、霜川生地の中田町(当時)の研究者・松田富雄氏が中田町役場で書写した戸籍の除籍簿には、出生日として7月30日が記載されています。これが、《7月30日説》の根拠であり、今も「4月8日説」に対比して、「7月30日」が「戸籍によれば」「戸籍上」と書かれる理由となっています。
ただ、一般論として言われる、「戦前の戸籍記載の日付にどれだけ信憑性があるのか、当事者に別の日付の記録・記憶があれば、年譜や伝記は、当事者側の資料をもとにするのが妥当である。」という点については、私としてもあえて反対するつもりはありません。これは、霜川の場合もあてはまるでしょう。ましてや、「戦前一般」ではなく、明治10年前後の戸籍上の記載ともなれば、その記載をどう読むかは難しい論点がでてくるだろうことは、承知しているつもりである。まずは、戸籍制度がまだかっちりとしたものに仕上がっていなかったこと、また、そうした現状を反映した形で、役場に届ける者も、また役場の担当者も、正確を期すという意識も、きちんと確認を求めるという意識も希薄ないしは皆無であったことは想像に難くない。むしろ届ける側の「便宜」が優先され、その便宜(利点)の有無が届け出の有無につながったのであろう。(こうした論点を、「戸籍制度」という法制度史上の問題として、くわしく整理してみたいと考えているが、ここではこれ以上ふれない。)
《4月8日説》。
これは、上に書いたように霜川の長女小枝子さんが語ったもの。また、「4月8日」という日としての数字情報ではなく、「お釈迦様の誕生日と同じ」という特徴的な情報が、伝達によって誤って伝えられることは少ないでしょうから、たいへん貴重なものであることは言うまでもありません。
しかし、この《4月8日説》説は、霜川の宣述を誤りなく伝えている信頼性のおけるものと思われるが故に、それだからこそ、問題点があるのです。それはこういうことです。
《4月8日説》の難点は、今のところ、その根拠が霜川自身の宣述だけであることなのです。言うまでもなく、自分の誕生の瞬間をその日時と共に正確に記憶している人間はいません。私の知る限りでは、霜川本人以外に、霜川の誕生に立ち会った人で、《霜川の誕生日=4月8日(=お釈迦様の誕生日)》ということを語ってくれる〔客観的な第三者〕は誰もいないのです。霜川が、自らの誕生日を、「お釈迦様の誕生日と同じ」と言ったことは事実だとしても、出生に立ち会ってそのことを客観的に証言してくれる人がいない限り、その内容の信憑性は担保されないのです。
では、かぐら川さんは《7月30日説》なのですね?、と早急に結論を求められても困るのですが、霜川の事績を追いかけて年譜の形で霜川の作家人生を整理しようとしている「記述者」の立場では、霜川の誕生日を“7月30日と記さざるをえない”というのが、現在の私の考えです。
そうお伝えしたうえで、二つほど、補いたいことがあります。
一つは、霜川が4月8日ではなく「お釈迦様の誕生日」と言っている点。この点については、霜川と信仰と言うテーマで、役不足は承知の上で、少し書きたいことがあるのですが、後日に回さざるをえません。
もう一つは、霜川より長生きした母親が、この点についてなにも発言していないと言う点。すくなくとも、息子が家族(孫)に「おれの誕生日は、お釈迦様の誕生日だよ。」というのを黙って聞いていた、そう言う霜川に対してあえて異議を唱えた形跡が無い、ようだ・・・という点です。そもそも、その母親が息子(霜川)に「おまえの生まれた日は、お釈迦様の誕生日だよ。」と言い聞かせた可能性がある(可能性が高い)のです。
(この点の傍証があれば、私はもちろん《4月8日説》に――「7月30日」という届けられた出生日の意味を考えながらも――従うことになります。)
いずれにせよ、この2つの点は、もっともっと多くのことを語る必要のある点です。というわけで、再論は後日と言うことで。
暑い日に、頭を少し論理的につかうことでクール・ダウンしようと思いましたが、古くなったしかも容量の小さい脳は、フル回転もせず(古古回転?)、わかりきったことをわかりにくく書いたにとどまりました。ご容赦のほど。
〔追記〕
以上は、きのう書いたものですが夜パソコンを使えなかったため、今日(7/31)のアップとなりました。投稿日付は、繰り上げて30日とさせていただきました。
by kaguragawa | 2012-07-30 23:59 | Trackback | Comments(0)