二人のミセス・タッピング(4)
2009年 08月 22日
文語詩稿 一百篇、昭和八年八月二十二日、
本稿想は定まりて表現未だ定まらず、
唯推敲の現状を以てその時々の定稿となす。
この「文語詩稿百篇」の2番目の作品が、タッピング一家が登場する「岩手公園」です。
岩手公園
「かなた」と老いしタピングは、 杖をはるかにゆびさせど、
東はるかに散乱の、 さびしき銀は声もなし。
なみなす丘はぼうぼうと、 青きりんごの色に暮れ、
大学生のタピングは、 口笛軽く吹きにけり。
老いたるミセスタッピング、 「去年(こぞ)なが姉はこゝにして、
中学生の一組に、 花のことばを教へしか。」
弧光燈(アークライト)にめくるめき、 羽虫の群のあつまりつ、
川と銀行木のみどり、 まちはしづかにたそがるゝ。
(続く)
by kaguragawa | 2009-08-22 19:36 | 明治大正文学 | Trackback | Comments(0)